コランダム corundum Al2O3 戻る

六方晶系 一軸性(−) ω=1.768〜1.772 ε=1.760〜1.763 ω-ε=0.008〜0.009
※石英とは共生しない。
※複屈折は石英並みに低いが,非常に硬く,薄片作成時に周囲の長石などの鉱物がすり減っても突出してやや厚め(約0.05mm)になるので,干渉色が1次の黄〜橙色に達することもある。

形態:6角板状・6角柱状,丸みのある粒状。自形〜半自形のことが多い。

伸長:c軸方向に伸びたもの(6角柱状)は伸長は負,a軸方向に伸びたもの(6角板状)は伸長は正。

色・多色性:多くは無色,時に青色(2Al⇔Fe・Tiの置換が2%程度進んだもの)や褐色など。有色のものは色の濃淡の多色性を示す。

消光角:結晶の伸びに対し直消光。

へき開:へき開は認められないが,(0 0 0 1)や(1 0 ‐1 1)に著しい裂開が認められることが多い(一見,完全へき開に見える)。(0 0 0 1)の裂開線に対しては直消光,(1 0 ‐1 1)の裂開線に対しては斜消光する。

双晶:時に(1 0 ‐1 1)の双晶があり,消光状態で認められる。その双晶は数回程度,反復することもある(反復双晶)。

累帯構造:光学的には累帯構造は認められない場合が多い。2Al⇔Fe・Tiの置換は1%以内のことが多く,それは薄片では無色(宝石名でサファイア)。その置換が2%程度進んだものは(高温の変成岩中でチタン鉄鉱と共生する場合,Fe・Tiの含有が多くなる),薄片でもはっきりした青色で(色の濃淡の多色性あり),それが無色の部分と累帯構造をなす場合がある。また,それとは別に褐色の部分と無色の部分が累帯構造をなすものもある。

産状

ケイ酸分に乏しい高温の広域変成岩に産し,グラニュライト・高温の片麻岩,時に角閃石片岩に見られる。また,高温の広域変成帯中の変成ドロマイト(石灰質片岩)中に金雲母・かんらん石・スピネルなどに伴い,粗大な結晶をなす場合もあり,このものは透明で宝石になるものがある。そのほか,高温の広域変成作用の過程で片麻岩と超苦鉄質岩の境で片麻岩が超苦鉄質岩による脱ケイ酸作用を受け,そこで真珠雲母,多量のスピネルなどと共に生成することがある。

接触変成帯では,非常にアルミニウムに富みケイ酸に乏しい泥岩起源のホルンフェルス中にAl2SiO5鉱物,黒雲母などに伴い産する。また玄武岩マグマに取り込まれた泥岩の捕獲岩(パイロ変成岩)中に青い板状結晶がムル石やスピネルなどと共に見られることもある。

火成岩中ではパーアルミナスな安山岩中にアルマンディン・ケイ線石などに伴い,副成分鉱物として板状の斑晶で少量含まれることがある。また,パーアルミナスな閃長岩質ペグマタイト中に長石類・黒雲母・ジルコン・リン灰石などに伴い粗大な結晶としてまとまって産する場合があり,研磨剤資源となる場合もある。




白雲母の反応縁のあるコランダム(クロスニコル 片麻岩中)
Co:コランダム,Fs:長石類,Ms:白雲母
石英を含まないAlに富む泥岩起源の高温の片麻岩中。コランダムとその周囲の基質部分のアルカリ長石の成分がコランダム生成後の温度低下による後退変成作用で,以下のように反応し,コランダム周囲に白雲母が生じている。
Al2O3(コランダム) +  KAlSi3O8(アルカリ長石の成分) +  H2O(水蒸気)  →  KAl2(AlSi3O10)(OH)2(白雲母)
※コランダムの干渉色は1次の淡黄色までだが,非常に硬く,薄片作成時に周囲の長石などの鉱物がすり減っても突出してやや厚め(約0.05mm)になるので,このように1次の明らかな黄色のことも多い。






上の薄片の試料を肉眼で見たもの



スピネルの反応縁がある片麻岩中のコランダム(平行ニコル)

高温の広域変成作用の過程で片麻岩と超苦鉄質岩の境で片麻岩が超苦鉄質岩による脱ケイ酸作用を受けた部分にはコランダムが生じ,その周囲にはしばしばスピネル(ややFeに富む鉄スピネルとの中間体)の反応縁が発達する。
また,片麻岩地域で見られるドロマイトが広域変成してできた結晶質石灰岩中にもスピネルの反応縁(Feに乏しい無色)を有するコランダムが見られることがある。




角閃石片岩中の集片双晶をなすコランダム 
Co:コランダム,Czo:斜灰れん石〜緑れん石,Hb:普通角閃石,Alm:アルマンディン

コランダムは単晶のほか,(1 0 ‐1 1)の双晶をなすことがあり,赤鉄鉱同様,それが反復して集片双晶をなす場合もあり,クロスニコルで明暗の直線的な消光状態でわかる。このような集片双晶をなすコランダムは片麻岩や結晶片岩などの広域変成岩にしばしば認められる。